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2007年6月 7日 (木)

【健康】10 日間の断食で変わった

あれはまだ私が独身だった31才前後で、体重92Kg〜93Kgぐらいの時だったと思う。それまで一度、三日間ほどのプチ断食はやったことがあった。しかし今回は本格的な断食に挑戦した。

 くれぐれも断っておくが、最近ダイエットばやりで案外気楽な気持ちで、断食をやる人が多いが、やり方を間違えると体に重大な危険がともなったり、また回復食といって断食あけの食事の取り方を間違えるとリバウンドが激しい。

従って専門家の指導のもとに行なうのが安全ということだけ最初に申し上げておきたい。幸い最近は断食道場がいたるところにあるし、専門のドクターが書いた情報も豊富にあるので参考にされたい!

 これさえ守れば断食は悪いことではない。ウィキペディアにはこうある。

 『断食は多くの現代病に効果があると考えられる。その理由は、人間の体は、消化吸収することがない状態に入ると、自然に体にたまった毒素を排泄する作用があるためである。現代病、いわゆる生活習慣病のほとんどが、体にたまった毒素の影響によるので、その毒素が断食により排泄されるからだ。』と。

さて私が何故断食をやろうと思い立ったかと言えば理由は二点あった。

一つ目はもちろん痩せること。医者に折り紙つきのメタボで10年で死ぬと忌まわしき予言を頂いたからだ。いろいろ試すが一向に効果がないので断食が切り札だった。

もう一つは改革請負人を仕事とする私自身の精神力を鍛え直すためだ。

 江戸末期の農政改革者として知られる二宮尊徳、つまり二宮金二郎は、千葉の成田山新勝寺に21日間こもり、断食を行なったことで改革の極意を悟ったそうだ。

この話を聞いてまさに一石二鳥だと思った。しかし、上で触れたように断食は危険だとも知っていたので、専門的に調べてみた。

 イスラム教のラマダーンなど世界中の宗教で断食が大事な宗教儀式だったり厳しい修業として位置付けられている。つまり日常とは違う神聖なものであり、大変厳しいものだと肝に銘じるべきだ。

 従って安易な気持ちで始めるべきではない。ダイエットといえども本当に痩せたいのか、なにがあってもやり続けるのか己の意志が問われる。すなわち【覚悟】がないと断食は出来ない。

 さて具体的にどうするか? まず自分は何日続けるかはっきりとした目標をたてること。何のために断食するかという動機を自分の中で明確に持つこと。さらに何があってもやり続ける意志を強く持つこと。

 その方法と注意事項は、(1)始める前に徐々に食べる量を減らす。
(2)和食や精進料理など胃にやさしいものにする。(3)はじめたら必ず水、ないしポカリスエットは一日2リットルは飲む。
(4)体に何か異常がみられたら、絶対に無理をしない。必要なら医者にいくこと
(5)断食後はやわらかい三分がゆぐらいからならす(6)すこしなれたら、お吸物や味噌汁などに徐々に変えていく
(7)絶対にやってはいけないのは、いきなり大量にたべはじめること。これをやるとリバウンドが強烈になる。断食中は体が死んだ状態になるので少しのエネルギーでも必死に吸収しようとするからだ。

私が調べたところでは、注意することは、ざっと上の項目くらいだろう。

もう一つ私が苦労したことがある。断食道場などにカンヅメになるのと違ってごく一般の日常の生活を続けながら行なったので、特に食事の誘いを断るのに苦労した。

仲のいい人ならば下手に隠し立てせず、私いま断食中なのと正直に言ったほうがいいだろう。相手が関心をもってくれることもあるが、誰かに宣言すると引っ込みがつかなくなって続けられるというのもあるからだ。

さてそれでは断食を始めてどうだったろうか?何が変わったのだろうか?

 正直、最初の二日目、三日目がもっとも苦しい。とにかく空腹との戦いなのだ。お腹はグーグーなり続けるは腹はへるは。

 この最初の難関をすぎると今度は不思議な感覚になる。四、五日目当たりからだ。それまでと違いあまり空腹感が激しくなくなる。体が慣れてくるのだろう。むしろ飲んでいるお水がまるで砂糖水でも飲んでいるように甘く感じる。

 問題は六日目、七日目以降である。妙にハイ・テンションになるのだ。高揚感が全身にみなぎり、断食していることすら忘れてしまう。

 それを過ぎると、体内に何も入れていないので確かに体のだるさもあるが、逆に魔物がとれたような全身の軽さも感じる。

 この時の感覚は不思議だ。人間が本来持っていた野性の感覚に戻るような感じ。感覚が急に鋭敏になる。五感が研ぎ澄まされる。

 特に嗅覚。日頃、視覚、聴覚ほど使っていないがこの時は犬の気持ちが分かった。とにかく町中を歩いていると普段は感じない『匂い』がそこらじゅうからただよってくる。

 そこらじゅうの食物が一斉に強烈な匂いを放ち自己主張する感じ。私たちは余り意識しないが、いかに日頃町中匂い、特にうまいものの誘惑が多いかをこの時ばかりは実感した。

 次に色の感覚。特に食物と関係するのだろうか?黄色、赤色が次々と目に飛び込んでくる。他の色は感じず、このいろのものだけをやたらと過敏に感じる。

 この時、改めて非常に大切なことに気付いた。『我々が食べる意味』だ。

 飽食の時代の今日、余ほどのことがないかぎり、意識して食事をしていない。

 食事の時間だから食べる。お腹がすいたから食べる。町でおいしそうなメニューを見つけたから食べる。友達と一緒だから付き合いで食べる。家族と一緒に食べないと怒られるから食べる。

 本当に大事な生命を維持するため、生きるために食べるということは、ほとんど意識していない。儀式や規則、慣習、誘惑、惰性、欲望、見栄などなどのために食べている。これが現代社会なのだと痛感した。


 いよいよ断食も最後の九日目、十日目。精神力との戦い、頂上まじかの山登りと同じで、ゴールを意識しはじめると最後は自分との戦い。

 ここまで頑張ってくると、やっぱり『終わったらあそこの店で○○○を死ぬほど食べてやろう』とかいう煩悩が私の中で急に台頭してくる。こうなるとやばい。今まで我慢出来ていたのに急にまたお腹がヘリ始める。

 ただしこの時の感覚は本当にお腹がへったのと違い、砂漠でオアシスの蜃気楼を見るのと同じ、幻影をみているのだ。しかも次から次から幻影は襲ってくる。

 きゃー、たまらん


 最後は寝てしまうか目を閉じるか、何も考えないか、考えても意識しないか。とにかく幻影の嵐をやり過ごすだけだ。

 断食を終える日、私は長年の親友の勤めるオフィスに来ていた。彼はコーヒーでもお茶でもなく、なんとインスタントのお吸物を出してくれた。

 なんと美味しいのだ。

 この味は強烈に頭に、体中に焼き付いている。

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 この結果、断食期間中の10日間で7Kg痩せた。86Kgと初めての80Kg台だった。しかしその後は多少のリバウンドがあった。やっぱり。

 ただしこの断食の経験は、その後のダイエットに多大なるものを残したと痛感している。

 まず第一に胃が小さくなったことだ。だから、断食後は普通の生活に戻っても、少しの量で満足できた。 第二に、空腹に耐える精神力が出来たこと。
 第三に周囲の誘惑に負けなくなったこと。
 最後に食事の意味を考えるようになったこと。生きるために食べる食事かどうか考えるようになった。

 今までは何げにムシャムシャとガキや畜生のように食べていて、満腹中枢も完全にマヒされていたが、断食はこの満腹中枢も野性の感覚に戻してくれたのだろう。少しで満腹し、満足できるようになったのだ。

 ということで、色々な要素があってこの後も痩せていったが、80Kgのところで恐ろしい壁にぶつかった。これは本当に大変な壁だ。
 これに対し、シーフード・ベジタリアン、つまり全く肉を食べない生活という武器で立ち向かうことにした。

 いよいよドラマも明日でクライマックスを迎える。


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