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2008年2月 9日 (土)

【教育】失敗から学ぶことの大切さ〜落合監督の場合

 昨年末、中日ドラゴンズ落合監督の指導者研究の特集を行った。随分色々な所からお声を頂戴した。

 『よくあそこまで事実を調べあげられましたね。』とか、『ブログのコーナーでは重すぎる。もう少し違う発表の仕方はないのか?』、『文章が長すぎて情報量が多い。』、『読みごたえがあった。さすがプロは違うと感じさせてくれた。』等々である。

 本来ならもう少し膨らませて、一冊の本にするのがいいかもしれないが、ならばネットの魅力は後退してしまう。

 サイトのコーナーの中に入れると例えリンクを張ってあっても読む人はぐっと減ってしまう。

 先日も大学時代の知り合いから『ブログの横幅をもう少し広くして欲しい』という要望があったが、『こればかりは富士通のニフティーのシステムを借りているのですいません。』と応える他なかった。

 ただいずれにしても、昨年の5月にこのブログを立ち上げ、7月からメルマガの準備を始め、9月からメルマガを開始。

 このブログと連動する形で、毎月一回メルマガを送っているが、お陰様で現在登録会員が、松下政経塾出身者を始め、私が直接お会いして名刺を頂いた方々を中心に1200名(2008年1月20日現在)に達した。

 私の直接の関係者が多いため、特に政界、財界など各界の若い指導者が多いことも大変力強い。

 また今回のように反響が大変大きく色々なお声を頂くようになったことも大変感謝している。

 この場をお借りして、読者の皆さん、関係者の皆さんに深くお礼を申し上げる次第である。

 さて前置きが長くなったが、今回の落合監督特集で
 なかでも一番多かったのが、『結局、落合監督の指導者として一番凄いところはどこかのか?』という疑問だった。

 これに対し私の答えは明快だ。『落合監督の最も優れた点、それは失敗から学ぶ能力がある。』というところだろう。

 彼が2004年に中日ドラゴンズの監督に就任してから四年間。リーグ優勝二度、日本一に一度輝いているが、彼はこの間常に進化し続け、また失敗から多くを学んで来たのである。

 我々の記憶に最も新しいところでは、昨年2006年の日本シリーズだろう。

 落合監督率いる中日ドラゴンズは北海道日本ハムファイターズに1勝4敗と苦杯をなめた。

 マスコミの多くは戦前の予想としてドラゴンズの優勝を予想していた。川上、山本昌の左右のエース、守護神・岩瀬、朝倉、中田ら若い力と荒木、井端を中心とした磐石な内野陣、福留、英智と強肩を誇る鉄壁な外野陣と落合監督の目指した「守り勝つ野球」は完成の域に達していた。

 さらに日本一と言われる荒木、井端の一、二番。WBCで見せた驚異の勝負強さを発揮する首位打者・福留孝介、来日以来3度の本塁打王に輝くパワーなら誰にも負けない二冠王・ウッズと伸び盛りのスラッガー森野、ベテラン井上、勝負強さに定評がある司令塔・谷繁、ここぞという一番に頼りになる切り札・立浪と攻撃陣も申し分ない。

 なんと言っても中日の強みは落合監督が就任してから、2004年リーグ優勝、2005年リーグ2位、2006年2度目のリーグ優勝と実績があった。勝ち方を知っている選手が多いという点でも明らかに優位であった。

 その点北海道日本ハムファイターズはチーム自体が若く、新庄、森本、小笠原、岡島ら勢いのある選手を中心に勝ち上がってきた。
 この勢いが果たしてどこまで持つのか、実績のある中日にどこまで通用するのか、疑問も多く、戦前予想は圧倒的に中日に軍配が上がった。

 「油断大敵」とはよく言ったものである。好事魔多しであった。選手の中の慢心と油断は、いつしか敵を見下し、勝負を甘く考えさせていたのだ。

 終わってみれば戦前の予想とは全く逆の大惨敗。既に引退を決めていた新庄選手を中心に、若い森本、稲葉などの勢いに乗った、怖いもの知らずの日本ハムの選手たちに好きなようにやられてしまった感じだった。

 第2戦、山本昌で負け、相手を勢いづかせてしまってからは相手の勢いは手のつけられないものなってしまっていた。第3戦からは敵の本拠地、北海道・札幌ドームだったことも分が悪かった。

 何しろ待ちにまった地元の球団の誕生とその優勝でわき返る町の雰囲気が敵陣の勢いに拍車をかけた。

 実力では誰が見ても明らかに勝っていながら、「勢い」という魔物に負けてしまった闘いだった。

 いつも負けた時は多くを語らない落合監督であるが、この日本シリーズだけは例外だった。闘いが終わりポツリともらした一言が印象的だった。

 「みんな選手は一生懸命やってくれました。責任があるとすれば監督である私一人にある。」

 「しかし今回だけは選手がシーズン中のように体が思うように動かなかった。それほどプレッシャーを感じていたのでしょう。」

 「それほど日本一というのは難しいということなんです。何しろ52年間も優勝から遠ざかっているんですから。52年の重みなんですよ。」と。
 
 どんなに苦戦であっても常に冷静に敗因を分析する落合監督がこの日ばかりは「52年間の重み」という曖昧な言葉で語っているのである。

 参考までに下記は中日の過去の日本シリーズの歴史である。

【中日ドラゴンズ(日本シリーズ)の歴史】(◎は日本一)

◎1954年 中日4-3西鉄 (天知俊一監督)
 1974年 中日2-4ロッテ (与那嶺要監督)
 1982年 中日2-4西武 (近藤貞雄監督)
 1988年 中日1-4西武 (星野仙一監督)
 1999年 中日1-4ダイエー (星野仙一監督)
 2004年 中日3-4西武 (落合博満監督)
 2006年 中日1-4日本ハム (落合博満監督)
◎2007年 中日4-1日本ハム (落合博満監督)


 53年前といえばあのフォークボールの神様と言われた杉下茂が大活躍をした年である。

 この年の前後と言えば、力道山が活躍し、マリリン・モンローとジョー・ディマジオが来日し、保守合同で自由民主党が出来たときである。落合監督が口にした52年間がいかに長いかその重みが分かるだろう。

 それほど常識では考えられない何かがそこにはあったということだろう。あの冷静でクールで緻密な計算をする、天才・落合博満ですら計り知れない何かが。

 今回2007年の日本シリーズで落合監督が異常とも言える勝利へのこだわりと執念は、すべてこの日の「天才でも及びのつかない考えられない敗戦」からすべては始まっていたのである。

 あの天才・落合博満にとって屈辱的な日本シリーズ敗戦から彼は何を学んだのか?そして、どのように考え方を変えたのだろうか?

 彼は勝つためには手段は選ばない、言い方を変えればどんな方法であっても勝たなければ意味がない、そう考えたのであろう。この日を境に彼の言動は大きく変わるのである。

 まず彼はチームづくりの方針を180度転換させた。今までの強いチームづくりから、『勝てるチーム』へと大きく方向を変えたのである。

 これは天才・落合博満の中ではそれまで考えもつかなかった意識改革であった。つまりそれまでは『強いチームが勝つ』ということこそ彼の頭の中の勝利の方程式だったものが、『強いだけでは勝てない』という新しい方程式に切り替えたことを意味するからだ。

 これまで選手として数々の試合をしてきた落合だったが、しかしここまで勝つことの難しさを感じたことはなかった。しかも自分の力だけでは何ともならない『目に見えない壁』を痛感したのだ。

 自分の力しか信じなかった天才が身体中に神社でもらったお札をはったり、来る日も来る日も眠れない日々が続き夜中に起きて突然意味不明のことを叫んだり、落合博満は間違いなくこの魔物と闘っていたのである。

 落合監督の変化は当然采配にも現れる。それまでは肩の疲労と選手寿命手のことを考えて、岩瀬の登板は9回限定だった。

 ところが今年の落合監督は違った。ここぞという勝負どころでは、8回からでも惜し気もなく岩瀬を投入した。これは2004年の日本シリーズ、セットアッパー岡本を温情でひきづり失敗した経験から学んだのだ。

 その発言も変わった。軽口やリップサービスも聞かれなくなった。あれは2004年西武との日本シリーズ。1勝1負で地元ナゴヤドームでの戦いを終えた落合監督は勝利に沸き返るファンの前で「このまま名古屋には戻ってこないでしょう。」と言った。これはこのまま3連勝しますという意味だった。

 ほんのリップサービスのつもりがこの言葉が敵の心に火をつけてしまう結果となりシリーズには負けてしまう。

 しかし、昨年の落合監督は違う。いうなればその全く逆。謙虚でどこまでも慎重であった。

 あの天才打者、落合博満は監督になっても、常に『失敗から学ぶ』姿勢を変えていない。

 おそらくそれは天才ゆえの苦しみと裏返しなのだろう。

 すなわち自分に対して教えてくれる人がいない孤立した立場のなかで、教えてくれる教師は自分自身しかいない。

 そうした環境が彼を単に野球という世界の中だけの天才だけでなく、『失敗から学ぶ』天才にも大きくかえたのだろう。

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